お問い合わせ
image

視覚障害者の単独歩行

アクセシブルコード
profile

A. Arakawa


今回は、アクセシブルコードのアドバイザーをしていただいている株式会社ラビットの荒川さんに、視覚障害者の当事者としての視点から、単独歩行のリアルについて具体的な体験を交えつつ語っていただきました。


目が見えない人が1人で歩く事はとても勇気がいることです。白杖を持って歩く場合、白杖が何かにぶつかることにより、目の前の障害物を知る事となります。そして、右に避けるか左で避けるか判断し、引き続き前に進みます。

白杖を使って階段を上る人

しかし、白杖には何もぶつからず、いきなり顔に何かがぶつかることがあります。何もない中、いきなり顔に物がぶつかるのですから、とても驚きます。
この1つは路上駐車のトラックです。トラックは車体が高いため、杖は車のボディーには当たりません。そしていきなりトラックの荷台と顔がぶつかることになります。

路上に泊まったトラック


次に怖いのが町中の看板です。最近は歩道に大きく出ている看板は少ないですが、それでものぼり看板がいきなり顔に触れるのは恐怖を感じます。
それでは「怖い」と言って人に頼って歩いて居ると、好きな所に行くことはできません。その怖いという恐怖を克服して、1人で歩いて居ます。


それに対して盲導犬歩行はとても安全です。盲導犬歩行では基本的に左側通行で行います。犬が左を歩き、その右側を視覚障害者が歩きます。電信柱、車、トラックなどは盲導犬が避けてくれます。常に右に避ける形になります。左側通行をしているので、道路の溝に落ちたりする心配はあまりありません。
白杖で歩く場合、点字ブロックを頼りにすることがありますが、盲導犬では道路にある点字ブロックは基本的には利用していません。誤解を与える表現ではありますが、犬の歩きたいように歩いて居ます。

盲導犬と一緒に散歩している

次は、交差点や信号について考えて見たいと思います。
歩道の段差があるところは、交差点に行くと下がったり段差があったりするので白杖で知る事ができます。盲導犬では段差があるところなどで止まるように訓練されているので同じように止まることができます。しかし、ここに信号があるのかどうかは初めての道では知る事はできません。

私の場合、歩いて居る人が多い道であれば、人が歩けば進みます。もう1つは、自分が進む方向に車が走っていれば、そのまま横断歩道を渡るようにしています。
普段利用して知っている場所であれば、人の流れや車の流れを考えて、信号の判断を行います。これは盲導犬も同じで、盲導犬は信号の判断はできません。
音声信号がある場所では安心して渡ることができますが、そうでないところでは少し不安を感じます。
十字路では無く、途中の横断歩道を反対側に渡りたいときもあります。この時には、自分が進む方向は車は走っていません。車の音がしていないと思ったら、急いで信号を私は渡るようにしています。

横断歩道などの音声案内


笑い話でなく実際にあった話です。
私が普段使い慣れているところの信号を渡ろうとしました。
すると弱視の妻がびっくり!「どこ行くの・・・」
私は「この信号を渡るんだ」
妻は「ここには信号はないよ!」
私こそ「ううん」とびっくり。
今まで何年も信号があると思って渡っていた道に、信号どころか横断歩道がないとは。
思い込みというのはとても怖いと感じました。
慣れた道であれば状況も分かっているので安心して歩く事ができますが、初めて行く道はどのようになっているのか分からないので、とても行くのに勇気を必要とします。

横断歩道や歩行者用信号がない交差点

そのため、信号や路地で声を掛けてくれるのはとても嬉しく感じます。
「用事があれば自分から声をかけたら?」と言いたい方もあるかもしれません。しかし、どこに人がいるのか分からない中では声をかけるのもとても大変です。
横断歩道などを一緒に渡ってくれるだけ、青になったら声をかけてくれるだけでとても助かります。
視覚障害者が1人で歩けるということはとても素晴らしいことだと私は思っています。
みなさんの温かい声かけをよろしくお願いします。

差し伸べる手