「多言語」と「日本語」の解説文の違いとは?(横浜港の事例から)
ローカライゼーション日本には様々な多言語解説文がありますが、そのほとんどは日本人に向けた解説文をそのまま翻訳したものですので、
「分かりにくい」と感じている外国人も少なくないようです。
今回は横浜市港湾局様の事例をご紹介しながら、「多言語」と「日本語」の解説文の違いについて触れていきたいと思います。
(事例)横浜市港湾局様の「市民や来街者のまちあるき促進」
2020年12月、横浜市港湾局様より「市民や来街者のまちあるき促進」に向けた新たな取り組みとして、
日本になじみのない方でも理解しやすい内容となるよう
「ネイティブ目線で英語・日本語解説文を作成し、QR Translatorに掲載してほしい」というご依頼をいただきました。
横浜港の周辺にQR Translatorを設置し、横浜港を訪れた方々にまちあるきを楽しんでいただきながら、
横浜港の歴史的遺産が数多く点在する大さん橋から新港ふ頭を経て、
桜木町駅に至るエリアをナビゲートするための仕組みを整備するものでした。
QR Translatorとは
アプリ無しで利用でき、QRコードをスマートフォンで読み取ると、
利用者の使用言語に合わせて翻訳文を表示させる他、音声読み上げにも対応したサービスです。
今回作成した解説文の設置場所
作成した解説文は、合計7つです。
- 1. A History of Yokohama Port(横浜港発展の歴史)
- 2. Zou-no-hana: The Birthplace of Yokohama Port(象の鼻:横浜港発祥の地)
- 3. Red Brick Warehouses: A Symbol of the Evolving Port(赤レンガ倉庫:横浜港発展のシンボル)
- 4. Shinkō Pier and the Hammerhead(新港ふ頭とハンマーヘッドの歴史)
- 5. A Designer Cityscape: The Minato Mirai 21 Project(洗練された都市デザイン:みなとみらい21事業)
- 6. Kishamichi Promenade(汽車道の歴史)
- 7. The Ship That Trained a Half-Century of Sailors(半世紀にわたり活躍した練習船 帆船日本丸)
ネイティブ・ライターによる取材
まず視察・調査のため、横浜市港湾局様と横浜みなと博物館の学芸員様のご案内のもと、
ネイティブ・ライターと編集者が現地を取材しました。
取材はとても大切な情報源です。ネイティブスタッフ自身が外国人旅行者の目線に立ちながら、
ファーストインプレッションや情報をもとに「どんな内容を紹介したらよいか」を吟味します。
整備対象物に対して専門家による説明を受けるほか、解説文が設置される現場も実際に視察します。
すべての取材を終えたら、
- 横浜市港湾局様にご相談のうえ、おおよその解説文の方向性を決めます。
- ライターがベースとなる文章を作成し、編集者がその文章を整えていきます。
- 英語を日本語に展開し「事実に誤認がないか」専門家による監修を入れて内容をチェックします。
こうして完成されたQR Translatorの解説文がこちらです。
A History of Yokohama Port(横浜港発展の歴史)の解説文より一部抜粋)
URL:https://qrtranslator.com/0000006931/000043/test:1
(ページへのアクセス・カウントに影響が出ないよう、ここではテスト用URLをご案内しております。)
「英語」と「日本語」の違い、そのポイント
「A History of Yokohama Port(横浜港発展の歴史」の事例(一部抜粋)
テキストの分量の違い:
日本のことを知らない外国人のために様々な補足をしますので、日本語解説よりも分量が多くなることがあります。
反対に外国人が理解しにくい詳細は省き、限られたスペースにテキストが収まるよう分量を少なくすることもあります。
ストーリー性を入れることも:
日本語解説にはありませんが、英語解説では外国人に「当時の様子」が伝わる説明を記載しています。
ストーリー性のある内容は外国人にとって関心をもつキッカケになります。
文章の順序について:
文章の順序も外国人が読みやすいように工夫しています。
一般的に、日本語解説文は最後まで読まなければ内容を理解できません。
しかし、英語は冒頭に概要を説明し、どんな内容が解説されているかすぐにイメージできるようにしています。
◎ 「日本語と英語の文章構成の違い」については、こちらの記事をご覧ください:
「文化的差異」という言葉を聞いたことがありますか?~グローバル化時代に必要不可欠な視点~
このようにネイティブスタッフがゼロから書き上げる解説文は、単なる翻訳と異なり様々な工夫がされています。
「多言語」と「日本語」の解説文は100%同じ内容になることはほとんどありません。
弊社では、ネイティブ目線で、しかしクライアント様が伝えたい内容も取り入れながら、
日本を訪れた外国人旅行者が「地域の魅力」を感じられるような解説文作成を心がけています。
今回大変お世話になりました横浜市港湾局のご担当者様、監修いただいた横浜みなと博物館の学芸員様、
関係者の皆様、本当にありがとうございました。
心より御礼申し上げます。
- 横浜市港湾局プレスリリース:
スマートフォン向け「みなとの歴史ガイド」の運用を開始しました! - 株式会社PIJINプレスリリース:
横浜市港湾局『みなとの歴史ガイド』にてQR Translatorを採用 英語ライターによる外国人目線でのコンテンツを収録 - 株式会社PIJIN(事例紹介&横浜市港湾局様にインタビュー):
【事例紹介】横浜市 みなとの歴史ガイド ―横浜港がまるで屋外美術館!?まちあるき満足度向上への取り組み―