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地域の魅力を伝える英語解説文とは

ローカライゼーション
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B. Craine

The Key to Writing Engaging Interpretive Text: Common Human Elements
興味を惹く解説文作成のカギ:人間が共通して持つ要素

“Information, as such, is not interpretation. Interpretation is revelation based on information.”
「情報そのものは解説にならない。解説とは、情報に基づいた理解をさせることだ。」
“The chief aim of interpretation is not instruction but provocation.”
「解説の目的は説明することではなく、刺激を与えることだ。」
– Freeman Tilden (フリーマン・ティルデン)  Interpreting our Heritage, 1959

このブログの投稿時点(2022年5月9日)で、私は日本国内の22の史跡の英語解説文を執筆・編集してきました。文字数にすると、長編小説の約2冊半に相当する量です。つまり、文章を通して、たくさんの人に、たくさんのことを解説してきたということになります。しかし、これだけの経験を積んでもなお、「人に物事の解説をする」ことは大変な作業であると感じます。

では、具体的に何が大変なのか?その答えは、冒頭のTilden(ティルデン)による2つの言葉に集約されます。一つは情報を活用すること、もう一つは読者の心を揺さぶることです。ティルデンが言うように、単に情報を並べるだけでは、解説文としては不十分だということです。

優れた解説文は、読者に、その場所、歴史、文化、そして自身との関連性を感じさせる力を持っています。さらに、読者の頭に浮かぶような質問に答え、それによってさらに質問を引き出すような文章でもあります。こうして、優れた解説文は読者の心に残り、数時間、数日が経過しても、いまだに読者の想像力をかきたてる効果があります。

しかし、読者の興味を惹くことはそう簡単なことではありません。人は元来、強い好奇心を持っていますが、何らかの形で自分に役立つこと以外には時間を費やすことはしない生き物です。

日本でアメリカ人エディターとして働く私は、外国人観光客にとって何が面白いのか、何が魅力的なのかについての判断を求められることが頻繁にあります。町や公園、博物館、寺社、歴史的建造物にはそれぞれストーリーがありますが、大抵の場合、それらをどのように伝え、人々を惹きつけるかという点に苦心しています。

ここで突然ですが(そして奇妙な例えですが)、パンダとヒグマ※が京都のカフェで、「どうしたら同じクマ科の動物たちに、この地域に興味を持ってもらえるか」を話し合っている場面を想像してみてください。
※パンダは植物のみを食べる草食動物で冬眠はしない。ヒグマは植物に加え、虫や動物も食べる雑食動物で、冬眠する習性がある。

パンダ:「地蔵院というお寺に行ったことがありますか?あそこの竹林は本当に最高ですよ。思い出すだけでよだれが出ます。さらにユニークなのは、このお寺にはピアノが設置されていて、参拝者が歌を歌えるようになっているんですよ!他のクマ科の動物も気に入ると思うなぁでしょう!」
ヒグマ:「竹林の何がそんなにいいんだよ?」
パンダ:「何がいいって、美味しいんですよ。お寺も素敵で、お地蔵さまもいますし。行ってみたいと思いませんか?」
ヒグマ:「ジゾウって誰?私が本当に知りたいのは、どこで美味しい昆虫の幼虫が手に入るかだけだ。その辺りで美味しい幼虫は獲れるのか?」
パンダ:「(驚いた様子で)幼虫?もちろんいるとは思いますが・・・」
ヒグマ:「そう、幼虫!冬眠から覚めたばかりの頃に食べると最高だぜ!」
パンダ:「ちょっと待ってください、私はこのお寺の魅力について話しているんですよ・・・そもそも冬眠ってなんですか?」

パンダは地蔵院とその竹林の魅力を知らせたくて必死ですが、ヒグマはそもそも竹林に興味はありません。そう、どちらもクマ科の動物ですが、どうも話が噛み合いません。

エディターとしての仕事は、簡単に言うと、ヒグマに竹林を面白いと感じてもらうことです。そのコツは、2匹の共通点を探すことです。これは探してみれば、たくさん出てくるものです。その際に心掛けなければいけないことは、一歩下がって「読者は何を知りたがっているのか」を問うことです。

日本を訪れる人(特に遠い国から来る人)にとって、一番の疑問は「何千kmも飛んでまでわざわざ訪れる価値のある場所なのか」ということでしょう。浅草の雷門のようなビジュアル的にインパクトのあるものについて書く場合であれば、その質問に答えるのは簡単です。写真を見せれば、ほとんどの人は、「でかいなー。そして、あの提灯、すごいなー!日本っぽいエキゾチックな場所だなー!」と思ってくれるでしょう。

しかし、地蔵院とその竹林の場合は、もっと複雑です。竹林を見るためだけに大陸を跨いでやってくる人はほとんどいないでしょう。ましてや、この寺の創建者である細川家の歴史や、そこに登場する幕府の有力者についてまで知りたがる人は、もっと少ない(そもそも、ヒグマからしたら「幕府ってなに?」という感じ)でしょう。

地蔵院と竹林の魅力を伝えるためにまず大事なことは、そこに人間に共通する要素を探すことです。愛、喪失、対立、発見、勝利、苦難、正義・・・これらの要素は、私たちの感情を揺さぶる普遍的な力を持っています。例えば、一休という一介の僧侶が、実は後小松天皇の御落胤で、地蔵院に6年間隠れて過ごしたという話は、「秘密の跡継ぎ」という歴史物語として、人を興奮させる要素があると考えられます。

もちろん、地蔵院を訪れる人の中には、竹林だけではなく、その美しいお地蔵さんたちを見るために訪れる人も多いでしょう。その際、同じお地蔵さんを見るにしても、ただ何も知らずに眺めるよりも、応仁の乱の知識や、地蔵院が焼け落ちる中、僧侶が一体のお地蔵さんの頭を持って命からがら逃げのびたという逸話を頭に入れたうえで見るのでは、持てる関心の度合いに大きな差が生まれるでしょう。

ティルデンが指摘するように、解説の目的とは、刺激を与えることです。観光資源の解説文を作成する私のようなライター、エディターが与えなければいけない刺激―それは、読み手である観光客が持つ、「見たことが無いけれども、何か心に響くもの」、「初めて知ったけれども、心に残る何かがあるもの」を旅先で見つけたいという気持ちではないかと思います。これは国籍やバックグラウンドに関係なく、人間であれば本質的に持っている意欲でしょう。

一般的にエディターの仕事というと、文章の整理、並べ替え、修正等のタスクが思い浮かぶでしょう。これらは難しいことではなく、料理と同じようなものです。つまり、練習すれば誰でも身につけることができるスキルです。これらの作業にはプロセスやステップがあり、それらを学べばよいのです。

解説文作成の本当の難しさは、むしろそこではなく、文章のメインポイントや構成を決めるステップにあります。参考文献をかき集め、無数の資料をめくり、それらから聞こえてくる、気さくな僧侶が400年の歴史を語る声に耳を澄ませながら、国籍やバックグラウンドに関係なく、人が刺激されるような要素を探し出すのです。


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