海外マーケティング事情:台湾のクラフトビールブーム
EXJカルチャーこんにちは、japan-guide.com繁体字版を担当、台湾出身の陳です。今回は母国の台湾滞在中に実感した台湾のマーケティング事情についてレポートします。
世界に広がったコロナ禍によって、食品への関心度が益々上昇していますが、台湾も例外ではありません。台湾では、比較的速やかにコロナの拡大を抑えることができていると思われますが、在宅の時間が長くなるにつれて、取り寄せ食品、プチ贅沢なお菓子などが人気になり、同時に、アルコール商品に対する興味・需要も高まりました。
?台湾のクラフトビールの台頭
台湾現地のビールといえば、日本でも知名度がある台湾ビール(Taiwan Beer/緑と白のラベル)が目に浮かぶかもしれません。しかし、実は2002年以降、酒製造業が民間企業に解放されてから民間のブルワリーも増えています。
特に、この5年間は台湾のクラフトビールブランドが増加傾向にあります。現在主流の台湾のクラフトビールのブランドについて紹介します。
金色三麥(SUNMAI )
台湾で初めて登録された民間のブルワリーです。2004年以降、台湾で続々とクラフトビールレストランをオープン。定番商品はハニー ラガーで、商品が既にシリーズ化されていて生産量も多く、近年はコンビニなどの進出に向けて新商品の開発に着手しています。
商品一覧(外部URL):http://www.sunmai.com/?page_id=9982
臺虎精釀(Taihu Brewing)
2014年当時は海外のビールを輸入販売していましたが、2016年より台北近郊でクラフトビールLAB、2017年には自社ブランドのビール工場を設立しました。現在はスーパーとコンビニにも進出し、大胆な缶デザインや他ブランドとのコラボ商品が人気。ビールと缶チューハイ商品も多数あります。
商品一覧(外部URL):https://www.taihubrewing.com/express
啤酒頭(Taiwan Head Brewers)
2015年に設立。お茶、柑橘類などの台湾ならではの食材を取り入れた台湾24節気ビールシリーズが有名です。伝統的な毛筆フォントと洗練されたラベルデザインが魅力的。現在はコンビニで販売しておらず、レストランや食品のセレクトショップなどで購入可能です。
商品一覧(外部URL):http://headbrewers.com.tw/beer-list/
台灣艾爾啤酒(Taiwan Ale Brewery)
台湾で初めてのエール(Ale)専門店。季節に合わせた台湾の果物を取り入れたエールビールのシリーズがメイン。瓶の形もレトロでラベルが可愛いのが特徴的です。
商品一覧(外部URL):http://www.taiwanale.com.tw/products.aspx
ほかのクラフトビールブランド
- 金車柏克金(BUCKSKIN)
- 禾餘麥酒(ALECHEMIST)
- 福爾摩沙精釀啤酒(Formosa Brewing)
- 紅點手工啤酒(Redpoint Brewing Co.)など…
スーパーとコンビニに進出しているビールブランド以外に、ほかは主にビストロ、バー、食品セレクトショップで販売されています。実際に訪れてオーナーさんに尋ねてみるのがおすすめです。きっとお気に入りの1本が見つかるでしょう!
現在、大手を除き、流通が多いビールブランドは3人で起業されているケースが多く、そのメンバー1人が元々釀造・酒製造業の出身者という組み合わせが定番のようです。2002年以前には、民間のブルワリーが存在していなかったため、いわゆる「百年老舗、何代目?」など日本の方からみると当たり前のこだわりが少ないかもしれません。
台湾のクラフトビールブランドの傾向は下記の通りです。
- 自社(自家)商品を開発
- ローカライズ(当地の食材、名前など)
- ラベル、缶デザインを重視(最初から目を留めるため)
- 次々とコラボ商品を開発(台湾人の好み、変化が激しいマーケティングに合わせるため)
?日本のビールや缶チューハイは停滞気味?
日本大手ブランドのビールや缶チューハイは、7~10年前からすでに台湾に進出しており、知名度も高くスーパーやコンビニで購入できます。しかし、この数年間クラフトビールの戦国時代に入ると、日本のビール、缶チューハイ商品への購買意欲が停滞する傾向があります。
クラフトビール・缶チューハイ商品を選ぶ時に、「好奇心が高い・冒険性がある」台湾人にとって「ラベルデザイン、この商品を試してみたい、面白そう、斬新さ」の要素は重要です。それは日本の国民性と異なる部分ではないかと思います。
もちろん、比較的高価なお酒を買うときには、ブランドへの信頼などを大事にしますが、考慮する順番が異なります。
ローカライズ化
日本のお酒商品の強みは「品質」「信頼性」「味の保証」ですが特に缶チューハイの果物シリーズは台湾の商品に比べると、あまり斬新さを感じられません。
日本のブランドは商品開発において、「(消費者の)季節に合わせた行動」を大切にしているようです。季節に合わせて旬の果物を取り入れ、時期に合わせた入れ替えをするのが一般的です。一方、台湾ではほぼ一年を通じて果物が生産できます。食品への「果物の取り入れ」「お茶の取り入れ」が台湾発ブランド強さの一つになっていると思います。
また、熱帯及び亜熱帯気候のため、日本のように明確な四季はありません。そのため、「この季節は必ずこの果物→この果物の缶チューハイ」という連想がそこまで強く働かないようです。
近年、台湾の缶とラベルデザインは抽象化の傾向があります。イラストの輪郭を明確にして、できるだけ洗練感がある色調を使うのが多いようです。そのため、最初からローカライズ化されており、最初から消費者の目を惹くデザインになっています。
?世界各国ビールが市場参入
台湾では近年、スーパーやコンビニでも日本産以外のビールと缶チューハイも多く販売されます。欧州の缶ビールやサワー系の以外に、時々にアジア各国のクラフトビールも見られます。
また、輸入商品同様、台湾国内産も課税されるので、価格面からみるとそこまで差がありません。
?日本酒、ウイスキー人気は根強い
日本酒、蒸留酒やウイスキーなどは根強く人気があります!台湾では、蒸留酒を生産する工場もありますが、日本酒を生産するところはほとんどありません。日本産は品質面においても魅力的です。
まとめ
台湾では、食品とアルコール商品の需要が高まる中において、商品自体の品質やブランドへの信頼性の他に、ローカライズ化が大事になっています。現地の目線に合わせた商品開発・マーケティング・プロモーションが今後も注目されます。
台湾の2021年のコロナ状況について、台湾でのコロナ対策とホテル隔離生活の所感も掲載していますので、是非こちらも併せてご覧ください。
※台湾では、18歳以上の方であれば、お酒商品を購入できます。