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キャッチフレーズから見る中国語と日本語表現の違い

ローカライゼーション
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S. Liu

企業様のオフィシャルページをローカライズする際、様々な課題が生じますが、今回はその中でも「キャッチフレーズの表現」にフォーカスしてお話できればと思います。

せっかく時間をかけて心を込めて書き上げた文章が、予想以上に多くの修正を受けることはローカライゼーションの仕事ではよくあることです。これは中国と日本で求められる表現の違いに起因しています。

翻訳では「元の文章にに忠実であること」が大事なポイントですが、ローカライズではそればかりにこだわってしまうと、現地の方にとって親しみやすいウェブサイトを構築することができません。言語によって微妙なニュアンスや語感が異なるため、文化や慣習、価値観の違いにも配慮する必要があるのです。

中国のキャッチフレーズはどんな感じ?

中国には「不到长城非好汉(万里の長城に登らなければ、勇者ではない)」という有名なフレーズがあります。これは困難に挑戦し克服することの重要性を強調しており、観光を促進するキャッチフレーズとしてもよく利用されます。中国では多くの観光客がこのフレーズに触れ、万里の長城を「ぜひ登ってみよう!」と思うことが多いです。

一方、日本ではこのように大げさで力強い表現は少なく、「登らなければ勇者ではない」という言い回しに対して、「そこまで言わなくても…」と少し強すぎると感じる人もいるかもしれません。

 

中国のキャッチフレーズの特徴

中国のビジネスやマーケティングにおける表現は日本と大きく異なりますので、下記のような中国のキャッチフレーズの特徴を理解することが大事です。

  • ストレートな表現

中国では、広告やマーケティングでストレートで直接的な表現が好まれます。商品やサービスのメリットをはっきりと伝え、消費者に具体的なアクションを促すのが一般的です。「今すぐ購入」「限定割引」といった強いメッセージで、顧客に即座の反応を期待する手法がよく用いられます。中国の消費者は、明確で具体的な情報を好み、ダイレクトなメッセージに信頼感を抱く傾向が強いです。

対して日本では、控えめで間接的な表現が一般的です。強く押し付けるようなアプローチは避け、消費者に対して「検討してもらう」「興味を持ってもらう」といった柔らかいトーンが重視されていると感じます。「よろしければご検討ください」「ご購入をお勧めします」といった柔らかな表現が多いので、そのままを翻訳すると、中国の消費者にはやや弱く感じられ、あまり響かないので、期待している反応を得られない可能性があります。また、下記の例のように、まったく違う意味で受け取られることもあります。

日本語の表現とその受け取り方の例:

日本語の表現本当の意味中国での受け取られ方
難しい無理ではないが困難頑張ればできる
検討するすぐには決められない相談する余地がある
  • 数値的根拠を強調する

中国のマーケティングでは、具体的な数値やデータを示すことで信頼性を高める手法が多用されています。例えば、「100万台以上の販売実績」や「99.9%の効果」といった数字が使われます。「‌‌香飘飘」というミルクティーのブランドでは、「年間で3億杯以上販売、カップを繋げると地球一周分」というキャッチフレーズで大きな人気を博し、とても印象的でした。具体的な数字を使って消費者の関心をひきつけ、市場での高いシェアを強調して瞬く間に人気ブランドになりました。

日本では数字よりも感情的なつながりを重視される傾向があります。見栄えが良い数値ばかりが強調されると、「本当だろうか?」と疑念を抱くことも少なくありません。そのため、製品が生活にどのように寄り添うかを描くことが購買意欲を引き出し、「ここちよさ」「安心感」などでアピールされる表現が多く用いられます。

中国で友達とデパートで買い物をしていた時、ある「無添加で安心」がセールスポイントとされる化粧品ブランドに対して、「安心は安心だけど、効果がないんじゃない?」という友達の発言にとても衝撃を受けました。「無添加=効果がない」という解釈があり、日本と中国の価値観の違いを実感しました。

無添加 = 効果がない!?
  • 実用性をアピール

中国では、製品の機能や実用性、価格といった具体的なメリットが重視されます。例えば、「効率的」「経済的」「耐久性」といった特徴を前面に押し出して、消費者にとっての利便性やお得感をアピールすることが一般的です。

日本では、柔らかい言葉や謙遜する表現が好まれています。製品やサービスを通じて得られる心理的な価値や生活への寄り添い方を訴求することが多く感じます。例えば、家電製品の広告では、機能性だけでなく、「家族との温かい時間を創り出す」「心地よい暮らしをサポート」といったメッセージがよく見られ、機能性だけではなく感情的なつながりを重視する傾向が強いです。中国語のキャッチコピーをその通りに書き直すと、パンチが弱いという印象を受ける可能性があります。

結論:単純翻訳では効果的な訴求は難しい

中国と日本では求められる表現のスタイルや価値観が大きく異なるため、単純に言語を翻訳しただけでは、効果的な訴求が難しいでしょう。中国市場向けには、ストレートで具体的、実用的なアプローチが求められますので、文化的背景や消費者の期待に応じた丁寧なローカライズが、成功するマーケティング戦略の鍵となります。