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カナダにおけるインバウンド・観光の取り組み

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K. Takeuchi

こんにちは。新規事業開拓部の竹内です。

今年1月、2023年の訪日データが観光庁より公開され、訪日外国人数 2,500 万人を突破(2019年比約8割)、訪日外国人1人当たり旅行支出は21万2千円(2019年比33.8%増)と、インバウンドはコロナ前を超える勢いで盛り上がりをみせていることが話題となりました。
(データ参照元:観光庁「訪日外国人消費動向調査2023年年間値(速報)及び10-12月期(1次速報)について」より)


また、NewYorkTimes誌「2024年に行くべき52か所」の3番目に山口市が、TripAdvisorでは「2024年ベスト観光地」の第1位に東京が選定されるなど、日本は世界からも一定の注目を集めており、インバウンドに関するデータもニュースでよく耳にするようになりました。

さて、日本に住んでいる我々は自国のインバウンド状況はなんとなく把握できる環境ですが、他の国における “インバウンド” はどのような状況で、どんな指針で取り組んでいるのでしょうか。個人的に、ワーキングホリデーで長期滞在した経験があることから思い入れのあるカナダを取り上げて、カナダにおけるインバウンドの実情や事例など、日本との比較も交えながらご紹介したいと思います。

Naiagara falls
スケールがすごすぎるナイアガラの滝。美しいカナダよ・・・たくさんの人に訪れてほしいです。

  

  

①訪問人数、国籍の特徴

まず、そもそもカナダに観光で訪れる観光客数や層はどのような特徴があるのでしょうか。
直近の2023年で比較してみましょう。

まず、外国からの訪問人数。これは単純に2023年で比較をしてみると、

  • カナダ:27,209,530人
  • 日本:25,066,100人 

となり、カナダの方が多いことがわかります。※JNTO「訪日外客数(2023年12月および年間推計値)」参照

ちなみにカナダのデータの参照元は、カナダ政府Statistics Canadaが出している“Non-resident visitors entering Canada, by country of residence, seasonally-adjusted”というページですが、ここでまず面白いと思ったのは、色を付けた箇所。アメリカ人(黄色)と、それ以外の国(オレンジ)で分けて統計を取っています。日本では国別の統計はありますが、このように特定の1国とそれ以外という分け方はあまり見たことがありません。

Tourism data
Non-resident visitors entering Canada, by country of residence, seasonally-adjusted より(2023年1月~12月分のデータ)

また、カナダはアメリカからの観光客が約7~8割を占めることがわかります。陸続きで国境を超えやすいアメリカからの訪問は納得ですが、ここまでの割合とは驚きです。
・・・思い出してみると確かに、ウィスラーでホテルのフロントをしていた頃、車で5時間ほどかけてホリデーを満喫しに来るアメリカ人ゲストも多かった記憶がありますし(5時間の運転は全然平気というゲストばかりでこれまた驚きでした笑)、部屋のオーナーもアメリカ人が半数以上占めていたと思います。
その他フランス、ドイツ等のWestern Europeや、日本や韓国を含むNorth East Asia からの訪問者が多いことが特徴的です。同サイトの数値を確認すると、この2エリアだけで、2023年におけるアメリカ以外からの訪問者数の約6割以上を占めています。

これは個人的な意見ですが、アジアから多いのは、留学先として特にバンクーバーやトロントが人気であることが挙げられると思います。私も語学学校に通っていましたが、クラスによっては日本人と韓国人で8割を超えるところもあるほどでした。比較的行きやすい英語圏であり、ワーホリや留学ビザがとりやすい等が理由として考えられます。

ちなみに日本の2023年の国別訪日数では、韓国が最大で全体の約3割を占めています。これと比べると、改めてカナダにおけるアメリカ人観光客がいかに多いかが分かりますね。

  

  

②カナダのインバウンドの取り組み戦略

カナダの戦略は色々とありますが、中でも気になったところをピックアップしてみました。

Canada 365: Welcoming the World. Every Day. The Federal Tourism Growth Strategy という、カナダ政府が発信しているページを見ると、「カナダは年間を通じてレクリエーション体験を提供できるというほかに類を見ない強みを誇っている。また、旅行者がアドベンチャー・ツーリズムに費やす費用がますます増えており、そこに注力する。」といった旨が記載されています。カナダの観光の指針のひとつに、まさに日本でも話題になっているアドベンチャーツーリズム(2023年9月にアドベンチャートラベルワールドサミットが北海道で開催)が入っているということですね。先ほど、アメリカからの観光客が多いとご紹介しましたが、アドベンチャーツーリズムは欧米圏で需要がある(※)ことからも、欧米が重点市場であるカナダはATに力を入れていると推測されます。

観光庁【アドベンチャーツーリズムナレッジ集別冊】海外調査結果

カナダがアドベンチャーツーリズムに力を入れている点は正直個人的にも納得といいますか、私がカナダを長期滞在の場所に選んだ大きな理由の一つは、やはり雄大な自然でした。パドリング、トレッキング、スキーやスノーボードなど、カナダで体験した様々なアクティビティは、カナダでしか味わえないものだと思いますし、人と自然が近い環境にあるカナダでは、自然を守る大切さや、植物・動物への理解が深い方が多いのが印象的でした。

Emerald lake
エメラルドレイクにて。合成じゃないですよ。まさに、ここでしかできない体験です。

その他、国際的なイベント開催や、Indigenous Tourisum の促進、そのほか地方におけるエコツーリズムや食をベースとした観光等、カナダらしい戦略や、日本でも耳なじみのある内容などが記載されています。

   

③カナダの観光取り組み事例

最後に、The Canadian tourism sector などを参考に、カナダにおける観光で特徴的な取り組み方針と事例を少しご紹介します。

◆Indigenous Tourism

カナダには、ファースト・ネーションズ、先住民とヨーロッパ人の両方を祖先とするメティス、カナダの氷雪地帯に住むイヌイット等の先住民が存在し、観光を通じて文化の継承や保護、歴史への理解を深める動きが高まっています。クラフース・ワイルドネス・リゾート(Klahoose Wilderness Resort)では、先住民文化体験が充実しており、地元の先住民の方との交流を通じて歴史や文化を学ぶことができます。

◆2SLGBTQI+ tourism

カナダは、多様性、公平性、包括性、個人の安全という共通の価値観により、2SLGBTQI+の旅行者にも選ばれる都市となっています。私が滞在したバンクーバーも多様性が光るdowntownでした。中でもウエストエンドでは、ピンクのバス停やレインボーバナー、ゲイビジネス、ゲイフレンドリーなイベントが開催されます。Pride Festivalは、ビーチ沿いにレインボーの旗を持った参加者が集まり、パレードも行われる大規模なイベントで、その多様性を祝福するイベントになっています。(私も観に行きましたが、ものすごい人と盛り上がりでした!)

◆Regenerative Tourism

観光において環境、文化、社会、経済の持続可能性を考え、人と人以外の生き物にとってより良い状態にして、次の世代に引き継ぐという概念が「再生型観光」と言われています。カナダ東海岸にあるチャーチルという街では、以前はシロクマと出くわすと、危険なため殺していましたが、今ではシロクマが住むエリアとの棲み分けをしたり、出くわしたときは麻酔銃で撃ってから移動させるなどの取り組みをすることで、現在では、野生のシロクマを見られる場所として、世界中から多くの観光客が訪れる場所となっています。過去に危険なシロクマというディスアドバンテージを抱えていた地域で、Regenerative Tourismの文脈の中で、安全策を講じることでシロクマに会える街としてリブランディングに成功した事例と言えます。

   

おわりに

さて、これまでカナダのインバウンド事情や方針等を簡単にご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。他の国の取り組みを見ると、その国の強みやらしさ、考え方を反映した内容になっていると思います。余談ですが、カナダに滞在したときに、逆に日本の独自の文化や、歴史の長さなど、日本の「らしさ」や強みに気づくことができました。こうして他の国に視点を当てると、自国の輪郭がよりはっきり見えると思いますので、また別の国と比較すると、面白いことに気づけるかもしれません。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。