
2025 自主活動休暇|関心を一つずつ経験に変える旅—誕生日に絵描き体験
EXJカルチャー印象派について
簡単に言うと、19世紀後半に始まった芸術運動です。その運動の命名はモネの『印象・日の出』という絵に由来していると言われています。しかし、「印象派」というのは、最初は「印象でしかない」という風に悪口として使われていたようです。確かに、写実主義等と比較すれば、細部の描写が少なく、荒く見えるとも言えますが、その方がどんどん変わっている風景を短時間で描けて、ポージング等無しの素の様子の表現が強くなっているのでないかと思います。

また、この運動が生まれるタイミングもちょうど良かった、という点も興味深く思っています。外出先で絵をかきたくても、絵具を持ち運びにくかったり、日差しによって色が変わったりしたら、思うような作品ができないはずです。しかし、19世紀には画家がスタジオを出るための条件も揃って、見たままの景色を外で描くことも可能となりました。まさに旅行や自然観察が好きな人に人気のありそうな技術運動ですね。

私にとっての印象派
美術史にはさほど詳しいわけではなく、学校で習った程度になるので、大体上記に書いてあることのレベルの知識です。しかし、アートというものは、詳しくなくても綺麗だと思うことは自由です。個人的には、特に自然が描かれている絵が好きで、逆に肖像画や人をテーマにした作品にはそこまで興味がわかない傾向があります。単純に、自分の家に飾るなら、人の姿より、自然が良いと思っていて、基本的には「この絵を飾りたいかどうか」ということが私の判断基準になります。アートを見る点では非常に浅い視点だと自分でも思いますが、深く考えずに好むものが「自分の好み」だと考えています。
その中で特に美しく感じるのは印象派、特にモネの絵です。それについても考え方が少しだけ変わっているかもしれませんが、印象派は自分の理想的な写真に最も近いのではないか、と考えています。カメラや写真が元々大好きですが、見ている世界の一部を写真に収めるだけでなく、普段、少しだけ加工もします。加工内容は主にライトと色味調整のみになりますが、その調整はまさに、自分の印象に近づけるための手段だと考えています。というのも、反射やピン、フォーカスの設定等によって、カメラでは人の目と全く同じ景色は撮れないと思うので、とった写真の景色は頭で覚えている景色ほど鮮やかではない、と考えることが多いからです。もちろん時間がたてば、人の記憶は美化される、ということもありますが、自分にとって理想的な写真は自分の印象を表現しているものだと考えており、そういう考え方は印象派の画家と似ているのではないか、とも思ったりします。

同じテーマを様々な季節や時間帯に撮ったり、同じ景色や好きな花、好きな動物やペット、同じものを何度写真におさめてもまったく飽きないところも、モネのような画家がやっていたことと似ている気がしてなりません。特に、カメラを買ったばかりの頃やその設定を覚えようとしていたとき、同じ植物を様々な角度から撮っていました。そのような行動はモネの絵にも見られて、個人的にそれがとても面白く感じます。(具体的に言うと、『黄色と紫のアイリス』の絵を見て、私も同様に下から花と空の写真を撮ることがある、と真っ先に思いました。)

体験への決意
誕生日の過ごし方は人それぞれだと思います。社会人になって、平日に当たっていれば、そもそもお休みが取りにくい場合もあるかと思いますが、私の考えでは、大人だからこそ、自分のことは自分で大事にするべきだと思っているので、自分の誕生日は特別感のある日にしたいです。そして、数年前からのマイブームは、誕生日をきっかけに新しいことを体験することです。2年前は日本で初めて乗馬を体験し、子供の頃にやっていた乗馬に戻ることになりました。去年はミュージカルに出演し、今年のアイディアは絵を描いてみることでした。
体験情報は探すまでもなく、Instagramでモネ展等の投稿をしていたからか、広告でartwine.tokyoの情報が流れてくるようになりました。そして、単純に何かを描く体験ではなく、様々な有名な画家さんの好きな絵に挑戦できるため、ずっと関心のあった印象派のモネのスタイルにも挑戦できます。さらにうまく描けたら、その絵を部屋に飾ることもできます。ポスターなどではなく、本物の絵を部屋に置けたら、一つ憧れが叶うので、是非参加してみたいものになりました。また、名前にあるように、描いている間に美味しいワインも飲めるため、ワイン好きの私には本当に理想的なものでした。
こうして、数か月前から興味があったものを見つけていたので、あとは自分にとって完璧なタイミング、誕生日を待つのみでした。
artwine.tokyoでの体験
オンラインで好きな絵を基準に参加したいワークショップを選び、簡単に予約しました。そして、当日は手ぶらで時間通りに現場へ向かいました。キャンバスや絵具、エプロン、アームカバー等、必要なものは既に準備されており、参加者としては席に座って、開始時間を待つのみでした。最初は真っ白なキャンバスの前に座って、不安が当然ありました。「私には描けるのかな?」「もっと簡単な絵を選ぶべきだったのかな?」等と考えていましたが、美大出身の講師が丁寧にワインを注いでくれて、他の参加者とカンパイしながら、少しずつ緊張がとけてきたので、人生で初めて筆を手に取りました。

今回のワークショップは、モネの一番好きな『睡蓮の池と日本の橋』という絵を選びました。その絵とペアリングされた日本製の白ワインをいただき、準備された画材の中には、3種類の筆やアクリル絵具があり、それぞれの使い方やいくつかのテクニックを教師にステップバイステップ教えていただきました。
まずは背景色を塗ってから、後ろに来る植物を描き始めました。最初はキャンバスに筆を近づけるだけでドキドキしていましたが、知らないうちに、試してみたいことが増えてきて、いつの間にか心から楽しくなっていました。モネは、事前に色を作るより、キャンバスの絵で色を混ぜることが多かったようですが、それを真似して、植物に光と影をつけてみる等、正面と背景の睡蓮のサイズで遊んだり、何をしたらより見栄えの良い作品になるかを考えるだけでとてもワクワクしてきました。実際のアート作品を真似するというよりも、自分の個性を活かして、好きな色合いや明るさ加減を決めることなどで、参加者の数だけ新たな絵が少しずつ生まれていきました。

そして、最後のほうで、最もドキドキする瞬間がやってきました。植物はなんとか描けたとしても、日本橋を描くとなるとかなり緊張してきました。幸い、こちらに関しても講師がとても丁寧に説明してくださったので、知らないうちになんとか形になってきました。色合いもわりと自由のため、より日本っぽくするには赤を橋に使うことも可能だったのですが、個人的には、モネの絵の中の青、緑や紫の色合いがとても好きなので、自分の絵の中にもなるべくその色合いを真似したかったです。
絵が完成する前には先生からいくつかアドバイスもいただきました。私が書いた作品の特徴は、上部の植物に春らしい光が差し込んでいることだったため、水にも白を足すことで、水面の明るさと水の反射を増やした方が、より統一した春っぽい絵になる、とのことでした。まさに、絵描きの経験がゼロの私が気づかないところだったので、初めての体験でこのような助言を得ることができてとても嬉しかったです。そして、その助言のおかげで絵が完成しました。

自分へのプレゼント
描いた作品は写真を撮るだけでなく、実際に持って帰れるため、今も部屋に飾ってあります。こういう絵をもっと飾れるスペースがあったら、きっともっと頻繁に通ってしまうと思います。しかし、一人暮らしでそれが少々無理なので、別の対策を考えています。
今回の『睡蓮の池と日本の橋』は自分へのプレゼントになりましたが、帰国の前など、実家に帰る直前にまたartwine.tokyoさんの別の絵のワークショップにも参加したいと思っています。そうすれば、他の作品に挑戦できるだけでなく、手作りが好きな母へのプレゼントにもなると思います。参加できるワークショップの数も多いので、家族が好きそうな絵や実家に合いそうなものを選べるのがまた嬉しいところです。
ちなみに、ポーランド人画家のウォンツキー(Paweł Łącki)の絵も体験メニューに入っているので、著名なアーティストだけでなく、新たなアティストとの出会いの機会にもなります。気軽に一度絵を描いてみたい、と思われた方にはおすすめです!私が参加したワークショップでは、皆が初参加だったにも関わらず、ちゃんと綺麗な絵が描けましたし、ワイン以外には、ソフトドリンクやおつまみも用意されているので、安心して誰でも参加できます!