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外国人から見るアニメ関連「聖地巡礼」の魅力と誘客に生かす方法

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LaturnasJ.

インバウンドマーケティング部のジェイリーンです。

本記事では、海外アニメファンの感想や個人的なエピソードを取り上げながら、外国人が感じるアニメ関連「聖地巡礼」(別名:アニメツーリズム)の魅力と誘客に生かす方法について解説します。聖地巡礼という切り口で観光コンテンツをご検討される際の参考としていただければ幸いです。

初めての「聖地巡礼」

私が初めて聖地巡礼に参加したのは、1ヶ月の留学プログラムで初来日した時で、プログラム外の自由時間を使ってアニメ『ラブライブ!』の聖地である秋葉原に行きました。

『ラブライブ!』は、音ノ木坂学院を入学希望者の減少による廃校から救うため、学校の宣伝を目的として結成された架空のスクールアイドルグループ「μ’s(ミューズ)」の奮闘と成長を描くメディアミックス作品です。メンバーは全員女子高生です。

目的地は主に二つありました。
一つ目は、μ’sのライバルアイドルグループが在籍する架空の高校「UTX学園」のモデルになったUDXビルで、もうひとつはμ’sの一員である東條希が巫女のアルバイトをしている神田明神でした。

(左)UDXビル (右)神田明神

この二つの場所のどちらも、作品内でとてもリアルに描かれています。
しかし、この二つの場所が現実にあるスポットをモデルにしたものだという情報は、特に明かされていません。なので、日本を知らない外国人にとって、作品を見ていてわかるのは、主人公達が放課後「秋葉原」という町で遊んでいることくらいです。

では、UTX学園のモデルになったビルや神田明神が、実際に秋葉原にある施設だという情報を、私はどうやって得ることができたのでしょうか?

それは、海外のSNSで発信されていた、「アニメ」と「現実」を比較する画像情報からでした。
私は『ラブライブ!』の大ファンでしたので、それを見た時、「日本にいる間に訪れないと!!」と決心したのでした。

当時は今よりもずっと日本語力が低かったのと、日本用SIMカードが無くてスマートフォンのGPSを使うことも出来なかったため、初めての聖地巡礼では迷子になり、神田明神を見つけることができませんでした。リベンジとして2回目に挑戦した際には、事前に地図をダウンロードしていたこともあって無事に辿り着くことができました。

神田明神では、(迷惑にならないよう周りに気を付けながら)記念写真を取ったり、 μ’sがいつもトレーニングの場として使っていた明神男坂の階段をキャラクター達のように駆け上がってみたり、また、境内にあった『ラブライブ!』のガチャガチャを回したりと、楽しく参拝することができました。

その日のことは、今でも大切な想い出になっていますし、来日する度に必ず行くところになりました(現在は日本に住んでいるので毎年訪れています!)。

「聖地巡礼」の魅力

私のように、日本への旅にあたってアニメや映画などのコンテンツに登場する「本物」のロケ地を訪ねたいと考えるファンは大勢います。

その理由は三つあると考えられます。

①親近感を味わうこと

一つ目は、好きなキャラクターと同じ空間に立ったり、記念写真を撮ったりして、そこから生まれる親近感を味わうことです。

これが一番わかりやすい理由ですね。「ファンだからこそ見に行きたい」景色がありますし、そこで名シーンを再現するのは、作品のファンならではの喜びです。こうした需要の源泉は、感情です。作品に対する強い感情が生まれなければファンを動かすことはできません。「共感」や「あこがれ」がこうした聖地巡礼のきっかけになります。

キャラクターは2次元ですが、ファンにとってはリアルで憧れの存在です。聖地巡礼は、歌手のファンがライブやサイン会に行くのに近いかもしれません。歌手のファンの中にもCD音源やライブ映像だけで満足するファンもいますが、コンサートに訪れて「本物」を見て、そこで感じられる一体感に最大の喜びを覚えるファンもたくさんいます。

アニメファンも同じです。聖地を訪れるファンは、聖地でしか味わえない「親近感」や「一体感」を求めているのです。

②日本に対するノスタルジア

二つ目は、行ったことのない国へのノスタルジアです。

ノスタルジアというと、日本語では故郷を想う気持ちというニュアンスで使われがちですが、英語の定義では「Nostalgia is an affectionate feeling you have for the past, especially for a particularly happy time.」(引用: Collins Dictionary)となっていて、必ずしも故郷には限らず、過ぎ去ったものへの愛情や愛着を表します。本文で言うノスタルジアは、この感情です。

周りのアニメファンに尋ねてみると、日本のアニメで見て「ノスタルジアを感じたもの」かつ「実際に見てみたいもの」はなんと蝉の声、夜の販売機、人気(ひとけ)のない田舎のバス停、高校の校舎などでした。どれも日本に住んでいれば、多少地域差はあるかもしれませんが、空気のように当たり前になってしまうものです。

これは必ずしもアニメファンに限ったことではないかもしれません。例えば、2023年訪日外国人消費動向調査では、「渡日前に期待していたこと」という問いに「日本の日常生活体験」と回答した旅行者が約21.5%(約539万人)いました。この回答も、上記のようなノスタルジアの感情に由来するものだと思われます。

日本のアニメではそうした日常風景が非常にリアルに描かれているため、そうした当たり前のような風景にノスタルジアを覚える層は一層多いことでしょう。

アニメは最高の観光大使ですね。

少しだけ余談で個人的な話をすると、初めて来日したばかりの時には、交差点の自転車・歩行者専用標識を見て「あの作品で見たのと同じだ!」と興奮して、その信号機の写真を撮ってしまいました。理解できないかもしれませんが、日本ならどこにでもあるような何の変哲もない信号機です。その写真は今も残っています。

交差点の自転車・歩行者専用標識と信号機。信号は青。

初来日時に撮影した信号機の写真です

留学から帰国した後、『君の名は。』(英語字幕版)が私の地元の映画館で放映された時のこともよく覚えています。新海誠監督が描く東京はリアリズムに溢れ、日本の平凡な日常の音(電車の音など)と風景が懐かしく思えてしまい、気がつくと泣いてしまっていました。

たとえロケ地でない場合でも、こうした「ノスタルジア要素」をアピールすることは効果的でしょう。
外国人にとって特にイメージしやすいのは、ジブリ映画に登場するような、日本人にとっては当たり前でも、外国人にとっては不思議さが潜んで見える、田畑や山林に囲まれている田舎の日常の原風景です。

これらは外国人が求める「日本」です。

③「リアル」の魅力

三つ目は、海外アニメの中では滅多にない「リアル」のロケ地が使われていることです。

海外アニメでは、日本のアニメのように、ロケ地とタイアップしてその場所をコンテンツの舞台とするようなことは滅多にありません。殆んどの海外アニメは、実在の場所ではなく架空の都市や町を舞台にしています。また、たとえ舞台が実在の場所となるような作品であっても、ランドマークとなるような有名な場所以外、だいたい架空の建物です。

それに対して日本のアニメやゲームでは、実在する特定の学校、神社、お店、マンションなどがリアルに描写されています。アニメがどのぐらい実際の場所を再現しているかを知ること・実感することはアニメファンに大きなインパクトを与えます。

ファンにとって、作品に登場するその場所には、ストーリー性と感情的な価値が与えられます。普通の階段に見えても、『君の名は。』の主人公たちが再会する須賀神社男坂が、アニメファンにとっては特別な場所であり、聖地巡礼の対象にもなっています。

アニメで見たものの「リアル(実物)」に惹かれる観光客は、旅行会社や地域の人々にとって思いもよらない対象を観光の目的にするのです。

聖地巡礼をインバウンド誘客に生かす方法

聖地巡礼をインバウンド誘客に生かすのに最も重要なことは、次の二つです。

ターゲット層を理解することと、多言語での情報提供です。

二種類のアニメファン

聖地巡礼をするファンには二種類、一般層とマニア層がいます。
マニア層はネットなどで関連する情報を自ら積極的に収集し、所謂オタク活動に触れる機会が多くあるファンです。

先述したようなSNSの見比べ映像を見たり、日本語がわかる場合は、聖地巡礼の情報が載っているファンブログを読んだりします。情報収集を終えてから、聖地巡礼を目的に来日し、あらゆるマニアックな場所へ足を延ばすファンです。公式に発表されている作品の舞台ではなくても、少しでも作品と関係があれば、その場所を訪れるマニアックなファンもいます。

例えば、竈門神社という福岡県太宰府市にある神社は、『鬼滅の刃』ファンの訪れる場所となっています。公式の舞台ではないのですが、主人公の竈門 炭治郎の姓と同じ竈門の名前を持つ神社ということで聖地になっているのです。

あるファンの実例ですが、あるアニメの重要な登場人物が首に白蛇を巻いていることから、山口県岩国市にあるシロヘビを祭る岩国白蛇神社や岩国白蛇の館を訪れ、そのついでに岩国市の他の観光地巡りも楽しんだというお話があります。

ファン活動によって、観光資源に付加価値が与えられる一例です。

岩国白蛇神社(山口県岩国市)

聖地巡礼の現状は、多くが国内ファン、または日本語ができるファンによって支えられていますが、インバウンド誘客にも無限の可能性を秘めています。
なぜかというと、好きなアニメの舞台が、本当に実在している場所だと知らない一般層のファンが大勢いるからです。

アニメと日本が好きだけど、日本語を話せなくて「聖地巡礼」という文化にも馴染みが薄いライトな一般層に対しても、旅前に情報を提供すれば、旅程にロケ地を加えようとする可能性が大いにあります。

例えば、屋久島は現在『もののけ姫』にインスピレーションを与えた島として多くの外国人観光客も訪れていますが、SNSでバズった投稿や旅行記事によって情報が拡散されたことが、その現状を生んだきっかけとなっています。

どのファンに対しても、認知度向上と情報提供が不可欠です。

多言語情報提供の重要さ

認知度向上

まずは、ある場所が人気アニメの舞台であることを多くの人に知ってもらうことからはじめましょう。
アニメ内でその場所の名前が映っているシーンがあったり、キャラクターがその地名を言う場合は印象に残りやすいですが、他のアプローチも考えられます。

例えば、SNS上でのPR、アニメ公式や配信サービスとのタイアップ、または円盤の特典映像での地域紹介を含めることなどです。著作権の問題などもあると思いますが、アニメ製作会社にとっても有益な場合が多いのではないでしょうか。

情報提供

聖地巡礼に関する情報の多くは日本語で提供されているため、日本語が分からないファン、日本の地理が分からないファン、実在の場所が舞台となっていることを知らないファンなどは、機会を逃してしまいがちです。例えば、地方を舞台とするアニメの場合、ロケ地への地理的位置やアクセス方法が容易に分からなければ、聖地に足を運んでもらうことは難しいでしょう。

ファンが訪ねたい場所についても、作品によっては情報を得ることが難しいです。ジブリや新海誠の映画なら、多言語の情報は結構ありますが、他の作品はそうでもありません。町の全体的な雰囲気を味わいたいファンもいますが、名シーンの再現などをやりたいファンもいます。しかも、ファンが訪ねたいコンテンツは所謂観光地に限定されておらず、販売機、ポスト、コンビニ、道路、路地裏など、アニメ内に映るもの全てが対象になりえます。多くは私有地や私有物であったりすることもあるので、情報発信は非常に重要です。

アニメの舞台となっているロケ地が具体的にどこにあるのかを伝える基本的な情報に加えて、マナー(住民が写真に映らないように気を付けましょう、私的所有なので立入禁止など)や、近くの他の観光資源、お店の情報などを載せることも大切です。私自身の経験から言えば、観光客を様々な場所まで連れて行くスタンプラリーは特に効果的です。

情報発信の媒体としては、旅マエと旅ナカで参考になるwebサイトが一番効果的でしょう。場所を見つける方法や訪ねる動機を提供すれば、人々はそれを利用します。旅ナカ用には簡単なパンフレットなどでもいいと思います。もし可能であれば、質の良いお土産用のパンフレットを作成して印刷されたものを現地で少額で販売しつつ、ネットで無料のPDF版をアップするのもいいかもしれません。

重要なのは、そのような情報を、見つけやすい場所(ネットであれば旅行者が多く見るメディアに載せる、紙媒体であれば駅構内や、観光案内所など旅行者が立ち寄るところなど)に配置することです。

まとめ

外国人が感じるアニメ関連「聖地巡礼」の魅力、インバウンド誘客の可能性についてお話してきました。

聖地巡礼に限らず、「リアル」や「感動」は旅のポイントになっています。そこに聖地巡礼という要素を掛け合わせ、適切に情報発信していくことで、新たな層の誘客に繋げていくことができるかもしれません。

エクスポート・ジャパンでは、多様な経歴を持つ外国籍スタッフが多く在籍しています。インバウンド誘客のアドバイス、プロモーション、多言語ライティングなど、ご相談がありましたらお気軽にお問い合わせください。