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欧米豪圏のインバウンド客の特徴&おさえるべきポイント

ジャパンガイド
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A. Nishio

弊社が運営に携わるjapan-guide.com(以下、ジャパンガイド)は、欧米豪を中心とした英語ネイティブ圏をターゲットにしたインバウンド向けメディアです。1996年のサイト開設以降、20年以上にわたって日本旅行に関連した幅広い情報発信を行っています。

今回は、長年のメディア運営で培ったノウハウを交えながら、欧米豪(今回は、米、豪、英、仏、独、カナダの6カ国)のインバウンド客の基本的な特徴・おさえるべきポイントを改めてご紹介していきます。

◇欧米豪圏の訪日客の特徴&傾向

ポイント①:滞在日数が他国(特にアジア圏)に比べて長い

観光庁が2019年に発表したデータによると、欧米豪主要6カ国の平均滞在日数は12.8日と、全国籍平均、またアジア圏の平均と比べてもかなり長いことがわかります。特にカナダ、フランス、ドイツは、14日以上と答えた訪日客が5割を超えるなど、欧米豪圏の中でも特に長い傾向にあります。

一方でアジア圏は、比較的日本との距離が近い点、訪日リピーター層が多い点などが要因となり、欧米豪圏の訪日客に比べて、滞在日数が短い傾向にあると考えられます。

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考7 国籍・地域(21区分)別 平均泊数 【観光・レジャー目的】)
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考7 国籍・地域(21区分)別 平均泊数 【観光・レジャー目的】)

また、滞在日数の長い欧米豪圏の訪日客は、ゴールデンルートと呼ばれる東京~京都~大阪間を中心に、一度の旅行で複数の都市を周遊する傾向が高いことも特徴のひとつです。
これらは、ジャパンガイドで配信している動画の人気ランキングにも共通しています。東京から箱根を経由して京都まで周遊するルートを紹介した「3 Day Trip from Tokyo to Kyoto via Hakone」は、配信から約2年半で再生回数は44万回(※2022年1月時点)とチャンネルの中でも最も人気なトラベル動画の一つです。コメントからも、「この行程を参考に旅行計画を立てたい」といったユーザーの声も多くみられ、関心の高さが伺えます。

ゴールデンルートの人気が高い一方で、それ以外の都市はまだあまり知られていないのも事実です。滞在期間が長く、国内を周遊する傾向が高い欧米豪圏のユーザーをターゲットに、幅広く日本の魅力をプロモーションすることは、地方都市への訪日客誘致のチャンスになりうると考えています。

実際に2018年にジャパンガイドで配信した東京から北陸を経由して京都までを周遊するニューゴールデンルートを紹介した「7-Day Trip from Tokyo to Kyoto」は、3本のシリーズ動画として累計57万回再生(※2022年1月時点)に達しています。新たな行程ルートとして、一定数の関心を集める結果となっており、ポテンシャルの高さが伺えます。

「7-Day Trip from Tokyo to Kyoto」動画:北陸エリアを経由して11都道府県を周遊するルート
7-Day Trip from Tokyo to Kyoto」動画:北陸エリアを経由して11都道府県を周遊するルート

ポイント②:訪日初心者が大多数を占める

以下、観光庁が行った調査によると、2019年に日本を訪れた欧米豪圏(主要6カ国)の訪日客のうち、来訪回数が「1回目」と回答した人は、全体の約7割を占めていることがわかります。全国籍平均(38.1%)と比べてもかなり高い割合といえます。中でもイギリス、フランスが73.9%、71.8%と最も高い割合となっています。一方で、他国と比べても比較的日本からの距離が近いオーストラリアは、来訪回数が1回目と回答した人は、66.2%と他の5か国に比べてやや割合が低いことがわかります。

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考4 国籍・地域(21区分)別 回答者属性および旅行内容 【観光・レジャー目的】)
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考4 国籍・地域(21区分)別 回答者属性および旅行内容 【観光・レジャー目的】)

このように訪日初心者が大多数を占める欧米豪圏の訪日客にとって、定番といわれるスポットやエリアは新鮮で欠かせないアトラクションです。そのため、欧米豪圏向けプロモーションにおいて、関心度の高いメジャーなスポットや要素を含めたコンテンツの制作がとても重要になってくると考えています。

ポイント①で紹介したゴールデンルートを紹介した動画などもその一例です。行程の中に、認知度の高い「東京」や「京都」などを含めることでユーザーの関心を幅広く集めることができるのです。

以下、2019年にジャパンガイドで配信した「Nagoya Side Trip to the Kiso Valley」も、その実例のひとつです。外国人にあまり知られていない「木曽エリア」をメインに紹介した動画にも関わらず、掲載から約2年間で25万回を超える再生回数(※2022年1月時点)を達成しています。要因としては、比較的認知度の高い名古屋を出発点とし、名古屋からのサイドトリップとして行程を紹介している点にあると考えられます。

名古屋市内を観光した後、木曽エリアの妻籠宿・馬籠宿などを周遊する内容となっており、「日本らしい近代的な部分」と「情緒ある歴史的な部分や自然」の両面を紹介しています。このように都市から気軽に訪れる点をアピールしつつ、ローカルなエリアを紹介することで認知度の向上や、身近に感じられることで訪問者の拡大に繋げられると考えています。

ポイント③:旅ナカの一人当たりの消費額が高い

滞在日数が長い欧米豪の訪日客は、旅行中の消費額も他国に比べて高い傾向にあります。観光庁が2019年に発表した以下のデータをみても、欧米豪圏の主要6カ国すべてが全国籍平均を上回っています。国別にみると、オーストラリアが最も一人当たりの消費単価が高く、続いてフランス、イギリス、ドイツの順に推移しています。買い物を楽しむイメージの強い、訪日中国人の2019年の1人当たりの消費単価は211,589円と、上位4カ国はこれを上回っていることがわかります。このことから、欧米豪圏の訪日客の拡大により、より大きな経済効果を見込めると考えられます。

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考9 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価 【観光・レジャー目的】)
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考9 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価 【観光・レジャー目的】)

項目別にみると、買い物代を除くすべての項目で、1人当たりの消費額が全国籍平均を上回っていることがわかります。以下、その中から「交通費」と「娯楽等サービス費」をピックアップし、分析していきます。

◎交通費

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考9 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価 【観光・レジャー目的】)
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考9 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価 【観光・レジャー目的】)

前述のとおり、欧米豪圏の訪日客は滞在期間が長く、複数の都市間を移動する傾向が高いこともあり、交通費内のほとんどの項目で全国籍平均を上回る数値を示しています。一方でレンタカーについては、6カ国すべてが平均を下回っており、欧米豪圏の訪日客は公共交通機関での移動を好む傾向にあることが伺えます。

中でも「Japan Rail Pass」については、全国籍平均を大きく上回っており、鉄道パスを活用した長距離の移動をしていることが見て取れます。上記の表には記載されていませんが、アジア圏の主要3カ国(韓国、中国、台湾)の平均は1,310となっており、欧米豪圏の訪日客は軒並みその10倍~20倍の数値となっています。ジャパンガイド公式サイト内のJapan Rail Passを紹介したページも、常にアクセスが多く発生する人気ページの一つとなっており、関心の高さが伺えます。

◎娯楽等サービス費

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考9 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価 【観光・レジャー目的】)
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考9 国籍・地域(21区分)別 1人1回当たり旅行消費単価 【観光・レジャー目的】)

娯楽等サービス費に関しては、特に「現地ツアー・観光ガイド」への消費額が、全国籍平均を大きく上回る結果になっています。アジア圏などの訪日客に比べて、欧米豪圏の訪日客が、より深くスポットや文化を学ぶことができる体験コンテンツを好む傾向にあることが伺えます。

また、各項目にみられる国ごとの特徴も興味深いです。「スポーツ観戦」の項目では、全体として平均を上回る結果となっており、中でもイギリスを筆頭にフランス、カナダ、オーストラリアの支出が多いことがわかります。これは2019年に開催されたラグビーワールドカップが大きく影響していると考えられます。

さらなる興味深い点として、「テーマパーク」、「スキー場リフト」の項目において、オーストラリアが6カ国の中でも飛びぬけて消費額が高く、それぞれの人気の高さが伺えます。

このようにターゲット国の趣味嗜好に合わせたプロモーションも効果的だといえるでしょう。

ポイント④:旅マエの計画期間長い&チケット手配のタイミングが早い

2019年にジャパンガイドユーザーに向けて独自に行った調査では、欧米豪圏ユーザーの6割が訪日旅行の3~11か月前に旅行計画を始めていることがわかりました。また、航空チケットの手配時期についても同様に、3~11か月前に購入するユーザーが全体の約7割を占めています。

旅マエの準備期間が長い=念入りに情報収集ができると捉えることができます。実際に、ジャパンガイドを訪れる約7割のユーザーは訪日計画中のユーザーですが、その多くがより詳細な情報を求めている傾向にあります。動画のコメント欄などでも、実際の交通移動の方法や費用、紹介スポットに関する細かい質問が多くみられます。そのようなニーズに沿って、より実用的な情報を含めた旅行ガイドを提供することがキーとなると考えています。

(参考:2019年ジャパンガイドユーザーアンケート調査)
(参考:2019年ジャパンガイドユーザーアンケート調査)
(参考:2019年ジャパンガイドユーザーアンケート調査)
(参考:2019年ジャパンガイドユーザーアンケート調査)

それでは、欧米豪圏の訪日客はどのような方法で旅マエの情報収集を行っているのでしょうか。以下、観光庁が2019年に発表したデータをもとに分析します。

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考11国籍・地域(21区分)別 訪日旅行に関する意識 (満足度など))
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考11国籍・地域(21区分)別 訪日旅行に関する意識 (満足度など))

「口コミサイト」での情報収集は、6カ国すべてにおいて全国籍平均(16.3%)を大きく上回っており、いずれの国も上位3位までにランクインしています。特にイギリスでは約半数の訪日客が「口コミサイト」を選択しており、旅マエの情報収集における主流の方法であることがわかります。「自国の親族・知人」や「日本在住の親族・知人」を選択した割合も、全ての国において平均を上回っています。そのため全体の傾向として、欧米豪圏の訪日客は、口コミサイトや親族・知人など実際の声を元にした情報を求める傾向にあることがわかります。

また注目いただきたいポイントは、「動画サイト(YouTube/土豆網等)」です。全国籍平均(16.0%)を6カ国すべてが大きく上回る結果となっています。アジア圏の主要3カ国(韓国、中国、台湾)の平均が約11%であることと比較しても、欧米豪圏の多くの訪日客がYouTubeなどの動画サイトを参考に情報を収集していることが伺えます。特にアメリカ、ドイツにおいては最も選択率が高く、約40%を示しています。このことから、欧米豪圏向けの英語での動画プロモーションを展開していくことで、より効果的な情報提供ができると考えています。

ポイント⑤:日本文化を体験できるコンテンツが人気

以下、観光庁が2019年に発表した、欧米豪圏の訪日客が「訪日前に期待していたこと」を調査したデータです。

(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考11国籍・地域(21区分)別 訪日旅行に関する意識 (満足度など))
(観光庁:「2019年年間値の推計」※確報値 参考11国籍・地域(21区分)別 訪日旅行に関する意識 (満足度など))

日本食、日本酒を楽しむことはもちろん、日本の歴史や伝統文化体験や日常生活体験などへの関心度が全国籍平均に比べて、かなり高いことがわかります。人気なアクティビティとして、「宿坊」や「座禅」、「茶道」などが挙げられます。また日常生活体験を求める訪日客も多く、特にフランスやドイツなどは50%近い選択率となっています。ホストと日本食の料理体験ができる民宿などが人気なコンテンツのひとつです。

その他にも、「自然・景勝地観光」や「自然体験ツアー・農漁村体験」、「四季の体感」など日本の自然を楽しめるコンテンツへの関心も他国に比べて高い傾向にあることがわかります。一方で、欧米豪圏の訪日客にとって、日本=東京や大阪の繁華街をイメージする人がまだまだ多いのも事実です。日本の自然の豊かさや自然を満喫できるスポットの認知度を高めることで、大都市だけではないローカルなスポットへの集客も望めるのではないでしょうか。

まとめ

今回は、欧米豪圏の訪日客の基本的な特徴&おさえるべきポイントを紹介しました。今後も、欧米豪市場は拡大していくことが予想されます。それぞれの国の特徴や傾向を理解することで、より効果的なプロモーションが可能になります。経済効果や地方誘致の面でポテンシャルの高い欧米豪圏は、インバウンド市場を活性化していく上で、重要なターゲットになると考えられます。きたるコロナ後のインバウンド回復に向け、改めて上記データを参考にプロモーションしてみてはいかがでしょうか。

ジャパンガイド事業についての詳細:https://www.export-japan.co.jp/solution_services/japanguide/